「以前、仕組み化に挑戦したけれど、うまくいかなかった」
そう感じている経営者は、決して少なくありません。
マニュアルを作ったけれど誰も見なくなった。
ルールを決めたけれど守られなくなった。
そうした経験があると、次の一歩を踏み出すこと自体が怖くなります。
この記事では、仕組み化導入時に実際に起きた失敗パターンを整理し、
なぜそれが起きるのか、どう進めれば同じ失敗を避けられるのかをお伝えします。
仕組み化の失敗は、部分最適のまま進めたときに起きる
結論から言います。
仕組み化が失敗する最大の原因は、全体最適の設計がないまま、部分最適の施策を積み重ねてしまうことです。
セミナーで良さそうな手法を聞いた。
本で読んだ仕組みを取り入れた。
他の経営者に勧められたルールを導入した。
どれも、それ自体が悪いわけではありません。
問題は、それが全体設計の中に位置づけられているかどうかです。
全体最適の中の部分最適であれば機能しますが、
部分最適だけを積み重ねると、社内に矛盾したルールが増え、やがて形骸化していきます。
まずは、実際にあった失敗パターンを見ていきます。
失敗パターン1 体制が整わないまま、システムだけ導入した
当社でも、以前に動画型のマニュアルシステムを導入したことがあります。
しかし、運用の体制が整っておらず、責任者が不在のまま進めてしまいました。
結果として、頓挫し、解約に至りました。
システムやツールは、あくまで手段です。
誰が更新し、誰が定着を確認するのか。
この体制がなければ、どれだけ優れたシステムを入れても、機能しないまま終わります。
失敗パターン2 マニュアルが更新されず、古いまま放置された
要点:更新の責任者が曖昧だと、マニュアルは作られた瞬間から古くなっていきます。
あるクライアント企業では、以前マニュアルを作成していましたが、更新されないまま古い状態が続いていました。
社員側も、改定が必要だと感じてはいたそうです。
しかし、「言い出したら自分が作らされそうで、言わない」という空気があったといいます。
これは、非常によくあるパターンです。
マニュアルを「作ること」がゴールになってしまい、
「誰が更新し続けるか」という運用の設計が抜け落ちていると、時間の経過とともに、必ず形骸化していきます。
失敗パターン3 決めたルールを、経営者自身が破ってしまう
経営者が決めたルールを、経営者自身が破ってしまうパターンもあります。
分かりやすい例が、会議への遅刻です。
社員には時間を守るよう求めているのに、社長自身が遅れて入ってくる。
これでは、そのルールに説得力がなくなります。
社員は、ルールの中身以上に、「誰がそのルールを守っているか」を見ています。
失敗パターン4 現場の反発を受けて、導入を撤回してしまう
要点:反発の背景には、これまでの部分最適の積み重ねが影響していることがあります。
現場の反発にあって、仕組みの導入を撤回してしまうケースもあります。
ただし、よく話を聞いてみると、
過去にも良さそうな施策を、本で読んだり他の経営者に勧められたりするたびに導入していた、
という背景があることが少なくありません。
これは、部分最適の最たるパターンです。
全体設計のないまま、次々と新しい施策が入ってくると、
現場は「また社長が言ってるよ」という受け止め方になっていきます。
スタッフが感じていた、その飽き飽きした気持ちは、今振り返るとよく分かります。
失敗を恐れて、着手できずにいる経営者たち
相談に来られる経営者の中には、
こうした過去の失敗経験から、着手そのものを迷っている方も多くいます。
「親から受け継いだ会社なので」と、社長としての役割そのものを、まだ明確に理解できていない方もいます。
社長と会長の役割の違いが整理できていない、というケースもあります。
「これで本当に良いのか分からない」
「社員の反応が、また、という顔をしそうで踏み切れない」
こうした言葉を、何度も聞いてきました。
過去に一度形骸化を経験していると、次の一歩への不安は当然のことだと思います。
失敗しないための進め方の勘所。
これまでの失敗パターンに共通するのは、「役割」「責任の所在」「目的」が曖昧なまま進めてしまっていることです。
失敗しないための勘所は、次の順番で自身の答えを持ってから進めることです。
・誰が、どの役割を担うのか(責任の所在)
・何のためにこの仕組みを入れるのか(目的)
・その仕組みは、全体設計のどこに位置づけられるのか
この3つを、着手する前に自分の中で明確にしておくことで、
現場からの反発や、途中での放置が起きたときにも、判断がブレにくくなります。
株式会社バリュー経営では、
経営の仕組み化を「計画化・明文化・組織化・定例化」という4つの段階で捉えていますが、
失敗の多くは、最初の「計画化」の段階を飛ばして、
いきなり「明文化」(マニュアル作成)から始めてしまうことで起きています。
こんな状態なら、相談を検討すべき目安
以下に複数当てはまる場合、自社だけでの整理には限界が来ている可能性があります。
・過去にマニュアルを作ったが、更新されず古いままになっている
・良さそうな施策を、その都度取り入れてきたが、定着していない
・社員から「また社長が言ってるよ」という空気を感じたことがある
・仕組み化を始めたいが、何から着手すべきか自分の中で答えが持てていない
一つでも心当たりがあれば、一度、外部の視点で現状を整理してみることをおすすめします。
よくある質問
Q. 過去にマニュアルを作って失敗しています。もう一度取り組んでも大丈夫でしょうか。
A. 大丈夫です。過去の失敗の多くは、更新の体制や責任の所在が曖昧だったことが原因です。その部分を先に整えれば、同じ失敗を避けられます。
Q. 現場の反発が怖くて、仕組み化に踏み切れません。
A. 反発の背景に、過去の部分最適な施策の積み重ねがある場合があります。まずは、これまで導入してきた施策を全体設計の中で見直すことから始めると、反発の理由が見えてきます。
Q. 仕組み化は、何から手をつければ失敗しにくいですか。
A. マニュアル作成などの「明文化」からではなく、役割と責任の所在、目的を明確にする「計画化」から始めることをおすすめします。
Q. 経営者自身が忙しく、途中で仕組み化を放置してしまいそうです。
A. 放置してしまう背景には、責任者が明確でないことが多くあります。経営者自身がすべてを担うのではなく、更新や運用の責任者を最初に決めておくことが重要です。
Q. 年商1億円未満の小規模な会社でも、同じ失敗パターンは起こりますか。
A. 起こります。規模の大小にかかわらず、役割・責任・目的が曖昧なまま進めれば、同じ形骸化が起こります。むしろ人数が少ないうちに、進め方を整えておくほうが有利です。
■まとめ
仕組み化の失敗は、能力の問題ではなく、進め方の問題です。
体制のないままのシステム導入、更新責任者のいないマニュアル、
経営者自身のルール違反、部分最適の積み重ね。
これらはすべて、全体設計を先に固めていれば防げるものです。
失敗を恐れて着手できずにいるなら、
まずは役割と責任の所在、目的を、自分の中で言葉にしてみることから始めてみてください。
「仕組み化」で会社を変える。
経営者の自由と、組織の自立を届ける。
「社長がいなくても回り、利益が残り、社員が自立する会社へ」
株式会社バリュー経営 山縣正二郎
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1. 仕組みのない経営が、私に教えてくれたこと
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