地元で2店舗、3店舗と実績を積んだ後、隣の県、あるいは車で1時間以上離れたエリアに、いきなり新店舗を出す。
こうした「飛び地出店」、いわゆる支店展開に踏み切る経営者は少なくありません。
理由は、良い物件が見つかった、知人から誘われた、その地域に伸びしろを感じた、など様々です。
しかし、実際にやってみると、思ったように数字が伸びず、社長自身が定期的にその店舗まで足を運ぶ生活が続く。
そんな状態に陥るケースを、何度も見てきました。
これは、その地域の選定が間違っていたから起きているとは限りません。
多くの場合、
「距離のある店舗を、距離のあるまま管理する仕組み」を用意しないまま
出店してしまったことが原因です。
この記事では、年商8000万〜1.5億円規模のサービス業経営者に向けて、飛び地出店がなぜ成功しにくいのか、
その構造と、出店前に整えておくべき考え方を整理します。
飛び地出店が難しいのは、距離の問題ではなく管理の問題
結論から言います。
飛び地出店が成功しにくいのは、地域選定が甘かったからでも、
その土地に需要がなかったからでもありません。
「近くにあるから、目が届く」という前提の上に成り立っていた経営スタイルを、そのまま距離のある店舗に持ち込んでしまうことが、
最大の原因です。
地元で複数店舗を展開できていた会社の多くは、
実は「仕組み」で回っていたのではなく、
「社長がいつでも顔を出せる距離にある」という物理的な近さで、
なんとか回っていたケースが多くあります。
車で15分、電話一本で状況を確認しに行ける距離であれば、
多少の問題は社長が直接出向いて解決できます。
ところが、飛び地に出店した瞬間、この「距離の近さ」という前提が崩れます。
原因は「距離の近さで管理していた経営」からの脱却不足
飛び地出店で数字が伸び悩む会社に共通しているのは、店舗管理の方法そのものを、距離に依存する形のまま変えずに出店していることです。
距離依存型の管理パターン
距離依存型の管理には、次のような特徴があります。
・何か問題が起きたら、社長かベテラン社員が直接現場に行って対応する
・数字の異常は、店舗を見に行って肌感覚で気づく
・新人教育は、既存店のベテランが数日間張り付いて行う
・ちょっとした判断に迷ったら、その場で電話して確認する
これらは、近隣出店であれば機能します。
しかし、飛び地に店舗ができた瞬間、「行けばなんとかなる」という前提そのものが成立しなくなります。
距離に依存しない管理パターン
一方、複数エリアで安定して展開できている会社は、出店前に次を整えています。
・数字の異常を、現地に行かなくても遠隔で把握できる仕組み
・新人教育を、ベテランの張り付きに頼らず完結できるマニュアルと動画
・現場の判断基準を、口頭確認ではなく明文化されたルールとして共有
・現地の責任者に、ある程度の裁量と判断権限を委譲する体制
つまり、飛び地に出す前に「距離があっても回る仕組み」を先に作っているかどうかが、その後の展開を分けています。
この状態を放置すると、どうなるか
距離依存型の管理のまま飛び地出店を続けると、数年後、次のような状態が現れやすくなります。
社長の移動コストが、経営を圧迫する
問題が起きるたびに現地へ向かう生活が続くと、移動時間そのものが大きなコストになります。
本来、経営判断や新規展開に使うべき時間が、移動と現場対応に消えていきます。
現地の責任者が育たず、依存が固定化する
社長やベテランが頻繁に現地入りする状態が続くと、現地の責任者は「最終判断は本部が来てから」という姿勢のまま育ってしまいます。
結果として、任せているようで、実際には何も任せられていない状態が固定化します。
新規出店の判断が止まる
移動コストと現場依存の両方が重なると、「もう一店舗、離れた地域に出す」という判断そのものが現実的でなくなります。
飛び地展開のペースが鈍化するのは、この段階です。
今すぐできる対策
いきなり全店舗の管理方法を変えるのは現実的ではありません。
まずは、次の3点から着手することをおすすめします。
・現状、口頭確認やその場対応で処理している判断を、ルールとして書き出す
・数字の異常を、現地に行かずに把握できる仕組み(日報・数値管理の共有)を整える
・現地責任者に、どこまでの判断を任せるか、権限の範囲を明文化する
特に重要なのは、三つ目です。
権限の範囲が曖昧なまま距離だけが離れると、現地責任者は「勝手に判断していいのか分からない」という状態に陥り、結局すべてが本部確認待ちになってしまいます。
仕組み化・組織改善の考え方
飛び地出店を持続可能な展開にするには、
社長が現地に足を運べる距離感に頼るのではなく、
離れていても回る仕組みを先に整えることが必要です。
株式会社バリュー経営では、
経営の仕組み化を「計画化・明文化・組織化・定例化」という4つの段階で捉えています。
・計画化:出店エリアごとに、誰が現地の意思決定を担うのかを先に描く
・明文化:これまで口頭で伝えていた判断基準を、言葉として残す
・組織化:現地責任者に権限を委譲し、本部確認なしで回る範囲を広げる
・定例化:離れた店舗の状況を、定期的に遠隔で確認する仕組みをつくる
この順番で整えていくことで、「距離の近さ」に依存していた管理を、少しずつ「距離があっても回る仕組み」に切り替えていくことができます。
出店予定地が決まっていなくても、既存の近隣店舗の管理方法を見直すところから着手できます。
こんな状態なら、相談を検討すべき目安
以下に複数当てはまる場合、自社だけでの整理には限界が来ている可能性があります。
・飛び地の店舗に、想定より頻繁に足を運んでいる
・現地責任者が、細かい判断まで本部に確認してくる
・新人教育のたびに、ベテランを現地に派遣している
・次の出店エリアを検討したいが、今の管理体制のままで大丈夫か不安がある
一つでも心当たりがあれば、一度、外部の視点で現状を整理してみることをおすすめします。
よくある質問
Q. 飛び地出店は、そもそもやめたほうがいいのでしょうか。 A. やめる必要はありません。距離があっても回る仕組みを先に整えてから出店すれば、むしろ商圏を大きく広げるチャンスになります。※ただし、場合によっては、撤退判断も必要です。
Q. どのくらいの距離から「飛び地」と考えるべきですか。 A. 距離の数字そのものより、「社長がすぐに顔を出せるかどうか」が基準です。車で1時間を超えると、頻繁な現地対応は現実的でなくなるケースが多く見られます。
Q. 年商8,000万円〜1億円規模でも、遠隔管理の仕組みは整えられますか。 A. 可能です。高額なシステムを導入する必要はなく、まずは日報や数値共有のルールを明文化するところから始められます。
Q. すでに飛び地出店をしてしまい、うまくいっていません。今から立て直せますか。 A. 立て直せます。現地責任者への権限委譲の範囲を明文化し直すことから着手すれば、段階的に改善できます。
Q. 近隣出店と飛び地出店、どちらを優先すべきですか。 A. 一概には言えません。ただし、近隣出店で「距離に頼らない管理」の仕組みを先に作っておくと、その後の飛び地出店の成功率は大きく上がります。
■まとめ
地元での実績をもとに離れた地域へ飛び地出店をしたものの、
思うように数字が伸びず、社長が頻繁に現地へ足を運ぶことになる。
この状態は、地域選定の失敗ではなく、「距離の近さ」に依存していた管理方法を、
そのまま距離のある店舗に持ち込んでしまったことが原因です。
出店前に、離れていても回る仕組みと、
現地責任者への権限委譲を整えておくこと。
この順番を変えるだけで、飛び地出店の成功率は大きく変わります。
「仕組み化」で会社を変える。
経営者の自由と、組織の自立を届ける。
「社長がいなくても回り、利益が残り、社員が自立する会社へ」
株式会社バリュー経営 山縣正二郎
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