「5年後、この会社はどうなっていますか」 そう聞かれたとき、具体的な情景を思い浮かべながら、答えられるでしょうか。
「もっと成長した会社になっていたい」
そんな抽象的な言葉しか出てこないまま、社是や経営計画書にビジョンという言葉だけを掲げていないでしょうか。
結論から言えば、ビジョンとは「何年後に、何を実現しているか」という、具体的な到達点のことです。
数字や情景を伴わないビジョンは、掲げているだけで、経営の道具としては機能しません。まずは、何が起きているのかを整理していきましょう。
結論:ビジョンは、「感動する未来像」であり「翻訳できる道具」でもある
ビジョンとは、会社が目指す、将来のありたい姿のことです。
- 何年後という、具体的な時間軸が定まっている
- 数字や情景として、思い描くことができる
- そこに向かうことに、社員が心を動かされる
良いビジョンは、聞いた人が「そこに向かって働きたい」と感じられる、感動を伴う未来像です。
同時に、それは単なる感動で終わるものではなく、数字と行動に翻訳できて初めて、経営を動かす実用的な道具になります。
ミッションとビジョンの違いを、あらためて整理する
ビジョンを言語化する前に、ミッションとの違いを整理しておく必要があります。
- ミッション:何のために存在するか(不変の目的・存在意義)
- ビジョン:何年後に、何を実現しているか(到達点・ありたい姿)
ミッションは、北極星のように、位置が動かない存在意義です。
一方、ビジョンは、その方角にある、具体的な目的地です。目的地であるビジョンは、到達すれば、また新しいビジョンへと更新されていきます。
ミッションが変わらないものだからこそ、ビジョンは、その時々の会社の状況に応じて、具体的な到達点として描き直されるべきものです。
なぜ、ビジョンが社員に「自分ごと化」されないのか
ビジョンが社員に伝わらない背景には、いくつかの共通した理由があります。
原因1:ビジョンが、抽象的な言葉にとどまっている 「業界no.1を目指す」「もっと成長する」といった言葉は、聞こえは良くても、具体的に何を意味するのかが伝わりません。抽象的な言葉は、社員それぞれが違うイメージを描いてしまい、共有された未来像になりません。
原因2:数字と情景が、セットになっていない 「年商10億円を目指す」という数字だけでは、社員にとって、その先にある景色が想像できません。数字とともに、「その規模になったとき、会社や自分たちはどうなっているか」という情景が語られて、初めてビジョンは実感を持ちます。
原因3:一度も、言語化する機会がなかった ビジョンという言葉自体は使っていても、実際に時間をかけて言語化する作業を、これまで行ったことがない会社は少なくありません。
年商3000万円から10億円規模の会社では、日々の業務に追われる中で、ビジョンをじっくり描く時間が、後回しにされがちです。
具体的な数字・情景を伴わないビジョンが、機能しない理由
抽象的なビジョンが機能しない理由は、経営の現場で、次のような形で表れます。
- 中期計画に、落とし込めない:「もっと成長する」というビジョンからは、具体的な売上目標や人員計画を導き出せません。
- 社員が、自分の役割をイメージできない:抽象的なビジョンでは、「その未来のために、自分は何をすればいいのか」が分からないままになります。
- 進捗を、確認する方法がない:数字や情景として定義されていないビジョンは、達成度合いを測る基準そのものがなく、いつまでも「目指している最中」のまま止まってしまいます。
ビジョンが機能しない会社の多くは、ビジョンそのものがないのではなく、それが数字と情景に翻訳されていないことが原因です。
今すぐできる対策:ビジョンを「数字」と「情景」で描いてみる
ビジョンを機能する道具にするために、まずは具体的に描いてみることから始めます。
時間軸を、明確に決める
「いつか」ではなく、「5年後」「10年後」など、具体的な時間軸を設定します。時間軸が曖昧なままでは、逆算した計画も立てられません。
数字を、一つでいいので入れてみる
売上、社員数、店舗数など、その未来を象徴する数字を、一つ選んで言葉にします。完璧な精度である必要はありません。
その未来の、具体的な一日を思い描いてみる
「その年商を達成したとき、社員はどんな表情で働いているか」「顧客はどんな声をかけてくれているか」といった、情景として思い描いてみます。
数字と情景がセットになったとき、ビジョンは初めて、他の人にも伝わる言葉になります。
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仕組み化の考え方:ビジョンから逆算して、中期計画をつくる
ビジョンを数字と情景で描けたら、それを掲げるだけで終わらせず、中期計画へと逆算していく段階に移ります。
- ビジョンの到達点から、3年後、1年後というように、時間軸を逆算して区切る
- 各年度で達成すべき数字を、ビジョンとのつながりが分かる形で設定する
- 中期計画を、部署やチームごとの具体的な行動目標にまで落とし込む
ここで重要なのは、中期計画を「ビジョンとは別の、目先の数字合わせ」としてではなく、「ビジョンを実現するための逆算された道筋」として位置づけることです。
この一貫性があることで、社員は、日々の業務がビジョンとどうつながっているかを実感できるようになります。
ビジョンから逆算した中期計画は、社員一人ひとりが自分の役割を理解し、主体的に動ける、自走する組織づくりの重要な基盤です。
相談すべき目安:こんな状態なら専門家に相談を
自社だけでビジョンを描こうとすると、次のような状態にある場合は、一度外部の視点を入れることをおすすめします。
- ビジョンが、抽象的な言葉にとどまっている
- ビジョンを、これまで一度も時間をかけて言語化したことがない
- 中期計画が、ビジョンとのつながりを感じられないまま作られている
- 社員が、ビジョンを自分ごととして捉えられていないと感じる
これらに一つでも当てはまる場合、自己流で言葉を選ぶより、
実践知のある第三者と一緒に、自社のビジョンと中期計画を整理したほうが、
社員にも伝わる形にたどり着きやすくなります。
■よくある質問
Q1. ビジョンは、何年後に設定するのが適切ですか。 会社の状況や業種によって異なりますが、3年から10年程度の範囲で設定することが多く見られます。あまり遠すぎると実感が持てず、近すぎると中長期の目標にならない、というバランスを意識してください。
Q2. ビジョンの数字は、現実的な範囲で設定すべきですか。 ある程度の挑戦的な数字であることも重要ですが、まったく現実味のない数字では、社員の共感を得にくくなります。挑戦と実現可能性のバランスを意識することをおすすめします。
Q3. ビジョンと中期計画は、誰が作るべきですか。 最初は社長が中心となって描くことが多いですが、幹部やリーダーとも共有しながら、具体的な数字や行動目標に落とし込んでいくことをおすすめします。
Q4. ビジョンは、どのくらいの頻度で見直すべきですか。 ビジョンで設定した到達点に近づいた場合や、事業環境が大きく変化した場合には、見直しを検討することをおすすめします。ミッションほど不変ではなく、状況に応じて更新されるものです。
Q5. 小規模な会社でも、ビジョンを言語化する必要がありますか。 必要です。社員数が少ないうちからビジョンを描いておくことで、組織が拡大したときにも、方向性を共有しやすくなります。
■まとめ
ビジョンとは、「何年後に、何を実現しているか」という、具体的な到達点のことです。 抽象的な言葉にとどまるビジョンは、社員に伝わらず、中期計画にも落とし込めません。
まずは、時間軸を明確にし、数字を一つ入れ、その未来の具体的な一日を思い描いてみることから始めてください。
ビジョンから逆算して中期計画をつくることで、社員一人ひとりが自分の役割を理解し、主体的に動ける組織へと近づいていきます。
ビジョンは、感動する未来像であると同時に、数字と行動に翻訳できて初めて、経営の道具になります。
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株式会社バリュー経営 山縣正二郎
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