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「心底順調」だと思った瞬間こそ、経営が最も危ない理由

売上好調、利益も安定している時こそ要注意。その安心感が組織停滞への入り口になります。成長期の外部環境の激変に頼れなくなった安定期には、経営者が意図的に「風」を吹かせ、継続的な改革が不可欠なのです。


売上も利益も安定し、「もう大丈夫」と感じていませんか。

安定期にこそ潜む組織停滞のリスクと、意図的に「風」を吹かせる経営の考え方を解説します。

売上も安定している。利益も出ている。社員も定着している。

「このまま行けば、もう大丈夫だ」。

そう感じられる状態は、経営者にとって何より安心できる瞬間ではないでしょうか。

しかし、20年以上の経営実践を振り返ると、その「心底順調だ」と感じた瞬間こそが、実は最も注意すべき時期でした。

市場の変化、競争環境の激化、顧客ニーズの多様化。

予測できない変化は、必ずどこかでやってきます。

その時に「今までのやり方」のままでは、組織は対応できなくなります。

結論から言えば、安定は目指すべき状態であると同時に、意図的に手を入れ続けなければ、静かに組織を停滞させる入り口にもなります。

まずは、何が起きているのかを整理していきましょう。

 

結論:安定期こそ、意図的に「風」を吹かせる必要がある

中小企業の経営には、「風」が必要です。

ここで言う「風」とは、変化であり、刺激であり、新しい試みのことです。

給与体系の見直し、新規事業への挑戦、人事改革、経営理念の刷新、出店といった取り組みは、すべてこの「風」にあたります。

成長期には、市場の急速な変化や競争環境の激化といった「突風」が、外部から自然に吹きます。

その突風に対応するために、組織は否応なく変化を迫られます。

一方、安定期に入ると、この外部からの突風は弱まります。

市場も競争も、一定の枠の中に落ち着いていくためです。だからこそ、安定期には経営者自身が意図的に「風」を起こす必要があります。

 

なぜ、安定期に風を吹かさなくなってしまうのか

安定期に入ると、多くの経営者は、無意識のうちに「風を吹かせること」をやめてしまいます。

原因1:「もう十分だ」という安心感が、変化への意欲を鈍らせる

売上も利益も安定していると、「これ以上のリスクは避けたい」という守りの姿勢が自然と強くなります。

 

原因2:変化がもたらす短期的なコストへの警戒

新規事業なら損失の可能性、人事改革なら葛藤の可能性、経営理念の刷新なら組織の混乱の可能性。こうした短期的なコストを避けたい気持ちが、変化への一歩を踏みとどまらせます。

原因3:緩やかな停滞は、気づきにくい

急激な業績悪化であれば、すぐに危機感を持てます。

しかし、安定期の停滞は緩やかに進行するため、変化の兆しに気づいたときには、すでに手遅れに近い状態になっていることがあります。

年商が一定の規模に達し、経営が軌道に乗ったと感じられる時期ほど、この「風を吹かせない」状態に陥りやすくなります。

 

風を吹かさないと、何が起きるか:茹でガエル現象

風を吹かさない状態が続くと、いわゆる「茹でガエル現象」が起こります。

徐々に温度が上がるお湯の中のカエルは、変化が緩やかであるために危険に気づかず、気づいたときには手遅れになっている、という比喩です。

企業も同じ構造をたどります。

年商10億円を超えるまで成長しながら、

安定期に入った瞬間に風を吹かせることをやめ、

「気づいたときには市場から取り残されていた」という会社を、これまで数多く見てきました。

 

今すぐできる対策:自社の状態をチェックする

風が必要かどうかは、次のような項目に当てはまるかどうかで、ある程度見極めることができます。

これらに複数当てはまる場合、その安定さの中に、静かな停滞が潜んでいるサインかもしれません。

 

 

実践事例1:コロナ下での新規事業という「風」

私自身、この「風」を意図的に起こした経験があります。

2020年、コロナパンデミックの真っ只中、多くの企業が縮小や防御、現状維持に走っていた時期に、

キッズセミパーソナルGYM事業という新規事業を開始しました。

理由はシンプルで、「今こそ、新しい視点を組織に吹き込む必要がある」と考えたからです。

その新規事業の投資規模は、約1億円。中小企業経営にとっては大きな投資でした。

しかし、組織にもたらした意味は、その数字を遥かに超えるものでした。

特に大型商業施設への出店という選択は、

「売上を作るだけの店舗」ではなく「ブランドイメージを作る旗艦店」という戦略的な視点を、組織全体にもたらしました。

営業チームは新しい営業プロセスを学び、マーケティングチームは新しい戦略概念を手に入れ、管理部門は新規事業の立ち上げプロセスを経験しました。

 

実践事例2:踊り場での「中の攻め」——階層別研修

会社の成長は、階段を上ることに似ています。ずっと上り続けることはできず、途中で「踊り場」という休憩の場が訪れます。

多くの経営者は、この踊り場を「成長が止まった時期」と捉え、新規事業や新しい挑戦といった「外への力」を使おうとします。

しかし、本当の踊り場の使い方は、その逆です。

踊り場こそが、内部体制を整える絶好の時期です。

外部の成長スピードが一時的に緩やかになっているからこそ、その期間に社内の仕組みを整えることで、次の階段を高く上る準備ができます。

私たちが踊り場で実行したのが、「階層別研修」への投資でした。

それまでは全社員向けの一律研修が中心でしたが、新入社員、中堅層、管理職、経営層と、

成長段階に応じて必要な思考やスキル、マインドセットが異なることに気づき、階層別の研修体系に切り替えました。

この投資は、短期的には直接の売上増加につながるものではありません。しかし、組織の基礎体力を大幅に強化し、次の成長段階に進む際の土台となりました。

 

相談すべき目安:こんな状態なら専門家に相談を

自社だけで「風」の起こし方を見極めようとすると、次のような状態にある場合は、一度外部の視点を入れることをおすすめします。

これらに一つでも当てはまる場合、自己流で判断を続けるより、実践知のある第三者と一緒に、今の自社に必要な「風」を見極めたほうが、的確な一手を打ちやすくなります。

 

よくある質問

Q1. 「風」は、必ず新規事業のような大きな取り組みでなければいけませんか。 必ずしも大きな取り組みである必要はありません。給与体系の見直しや人事改革、経営理念の刷新なども「風」にあたります。自社の規模や状況に応じた変化の大きさを選ぶことが重要です。

Q2. どのくらいの頻度で「風」を吹かせるべきですか。 経験則としては、最低でも3年に一度は、何らかの変化を意図的に起こすことをおすすめします。正確な周期に決まりはありませんが、それくらいの間隔を目安に、組織の新陳代謝を意識することが重要です。

Q3. 安定している状態で、あえてリスクを取る必要はあるのでしょうか。 風を吹かせることには、短期的なコストやリスクが伴います。しかし、風を吹かさなかったことによる長期的なコスト、つまり気づかないうちに進行する停滞のほうが、はるかに大きなリスクになります。

Q4. 踊り場での社内整備は、具体的に何から始めればいいですか。 まずは、階層ごとに求められる思考やスキルが異なることを認識し、研修や育成の仕組みを見直すことから始めることをおすすめします。

Q5. 従業員の成長実感の低下は、どうやって気づけばいいですか。 定期的な対話の機会や、組織サーベイを通じて確認することができます。「今のままで大丈夫」という空気が社内に広がっていないか、意識的に確認する姿勢が重要です。


■まとめ

「心底順調だ」と感じられる状態は、

経営者にとって安心できる一方で、意図的に手を入れ続けなければ、静かな停滞、いわゆる茹でガエル現象の入り口にもなります。

まずは自社の状態をチェックリストで振り返り、この数年で大きな変化を起こせているかを確認することから始めてください。

会社の成長は、階段と踊り場の繰り返しです。

踊り場での過ごし方が、次の階段の高さを決めます。

安定期こそ、経営者自身が意図的に「風」を吹かせるべき時期です。その問いに真摯に向き合ったとき、初めて持続可能な成長が生まれます。

 

「仕組み化」で会社を変える。 経営者の自由と、組織の自立を届ける。 「社長がいなくても回り、利益が残り、社員が自立する会社へ」

株式会社バリュー経営 山縣正二郎

 

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