年商600万円を超え、そろそろ人を雇うべきか迷っていませんか。
採用の前に決めるべき事業モデルと、判断のタイミングを解説します。
年商600万円を超えた経営は、少しずつ安定してきた実感があります。
それでも、時間がない。
体力の限界を感じる。
「そろそろ人を雇うべきか」。
その決断の瞬間は、多くの起業家に訪れます。
本当に採用すべきなのか。
どんな人を採用すべきなのか。
あるいは、採用しないほうがいいのではないか。
その迷いも、同時に生まれてくるはずです。
結論から言えば、
採用を判断する前に決めるべきなのは、「この事業を、どんな規模で進めていくのか」という事業モデルです。 まずは、何を考えるべきなのかを整理していきましょう。
結論:採用判断より先に、「事業モデル」を決める
多くの起業家は、「人が足りない」という今の苦しさから、「とりあえず人を雇おう」と考えがちです。
しかし、その判断の前に、問うべき問いがあります。
「この事業を、今後どのような規模で進めていくのか」
「5年後、10年後、この会社はどうなっていたいのか」
そのビジョンによって、採用戦略はまったく変わります。
事業モデルは、大きく2つに分かれる
モデル1:事業規模を拡大していくモデル
この場合、最初に採用するスタッフは、一時的なパートナーになる可能性が高くなります。事業が大きくなる段階で、求められるスキルや力量が変わっていくためです。営業スキル、マネジメント能力、戦略思考。その進化に対応できない場合、後々「現場から引いてもらう」という難しい決断が必要になります。
モデル2:事業規模を拡大しないモデル
一方で、「二人三脚で、永く一緒にやっていく」という選択肢もあります。家族などのファーストスタッフと共に、無理なく、長く続けるという経営姿勢です。この場合は、採用スキルよりも、パートナーシップの築き方が重要になります。
どちらが正しいということではなく、自社が目指す規模に合わせて選ぶべき道です。
いつ採用すべきか:「稼働率60%」という判断基準
事業モデルが見えてきたら、次に気になるのが「いつ採用すべきか」というタイミングです。
経験則としては、「売上が100%稼働の60%を超えた段階」が、採用を検討する一つの目安になります。
具体例で考える
分かりやすく、分単価100円のサービスで考えてみます。
- 時間単価:600円
- 8時間労働での日給:4.8万円
- 月20日〜25日勤務の場合、月収は約105万円〜120万円
これが、毎日フルに稼働した場合の「100%稼働」の売上です。
この60%、つまり月売上が60万円を超えた段階が、採用を検討し始めるタイミングになります。
なぜ、100%ではなく60%なのか
100%稼働では、人は続きません。
営業、提案、請求書作成、事務作業、経営判断。
そのすべてを一人でこなしながら、時間給を稼ぎ続けることは現実的ではないからです。
実際には、
仕事の60%〜70%程度が売上に直結する業務で、残りは経営業務にあてられるのが実情です。 だからこそ、売上が稼働率60%相当に達した時点で、次のスタッフを雇う検討を始めるのが適切だと考えられます。
家族を採用するという選択:良かった点と、危険だった点
私自身は、最初から家族に仕事を手伝ってもらうという決断をしました。 最初から軌道に乗るのでは?と、言う自信があったからです。振り返ると、これは「とても危険な決断」でもありました。
危険だった理由
- ビジネスと家庭の境界が曖昧になる:仕事上の不満が、家庭の不和に発展する可能性があります。経営判断の失敗が、夫婦関係にも影響します。
- 給与や待遇の決定が曖昧になる:「家族だから」という理由で、適正な給与を設定しないことがあり、長期的には大きな問題を生みます。
- キャリアパスが不明確になる:業務内容や責任が変化するとき、家庭内での役割変化も同時に起こり、その二重の変化への対応は想像以上に難しいものです。
それでも、良かった理由
- 信頼が最初から成立していた:家族という信頼基盤が、多くの困難を乗り越える力になりました。
- コミュニケーションが密だった:家庭内のコミュニケーション習慣が、ビジネスの場でも活きました。
- 同志としての感覚があった:困難を乗り越える力になったのは、この感覚でした。
「その後」が大変だった:部門長化への道のり
家族と共に事業を始めたあと、大変だったのは「その後」でした。
会社が成長していく過程で、部門長としての力量が必要になります。
当初の仕事は、営業補助や事務・経理といった実行業務が中心でした。
しかし会社が拡大するにつれて、部門を統括する力、人材育成、戦略思考といったマネジメントが求められるようになります。
それまでの仕事の仕方では対応できなくなる時期がやってきて、最終的には「現場から引いてもらう」という決断が必要になりました。
これは、夫婦関係でもビジネス関係でも、最も難しい局面の一つです。
また、この規模の場合、部門長には何が必要で、どんな規模や機能を作っていくか?なども明確には出来ておらず、振り返ると大変な迷惑をかけてしまった。と思います。
今すぐできる対策:最初から「期間」を決めておく
家族を採用する場合、特に重要なのが、最初から期間を決めておくことです。
例えば「3年」という期間を決めて手伝ってもらい、その3年で「現場から引く」という判断をすることを、あらかじめ取り決めておきます。
期間設定のメリット
- 感情的な衝突を減らせる:「期間が来たら交代する」という事前合意があれば、突然の責任剥奪にはなりません。
- キャリアパスが明確になる:「この期間で、現場のプロからマネジメント層へ進化する」という目標が生まれます。
- 次の体制への準備ができる:現場から引く際に、次のリーダーを育成する期間を確保できます。
家族に限らず、最初のスタッフとの関係を、事前の取り決めによって、長く良いものにしていくことができます。
仕組み化の考え方:採用する人・しない人の基準を持つ
採用を決めたら、次に大切なのは「どんな人を選ぶか」という基準を、あらかじめ持っておくことです。 ここでは「採用したい人」より、「絶対に採用しない人」を決めるほうが、判断はシンプルになります。
絶対に採用しない人の特徴
- ビジョンに共感できない人:給与だけの雇用関係では、うまくいきません。
- 「ここは一時的」と考えている人:ファーストスタッフには、右腕としての覚悟が必要です。
- 自分のやり方を変えられない人:小さな会社では、柔軟性が最も大事なスキルです。
- 報告・連絡・相談ができない人:小さな会社では、コミュニケーションがすべてです。
必ず持っていてほしい要素
- 誠実さ:給与や待遇について、正直に話し合える人
- 学習意欲:分からないことを「分かりません」と言える人
- 柔軟性:予定外の変化に対応できる人
- 共感力:あなたのビジョンや苦労に共感できる人
この基準を持っておくことで、勢いだけの採用を避けやすくなります。
相談すべき目安:こんな状態なら専門家に相談を
自社だけで採用の判断を進めようとすると、次のような状態にある場合は、一度外部の視点を入れることをおすすめします。
- 月売上が60万円を超えているが、事業モデルをまだ決めていない
- 採用したい気持ちはあるが、判断基準が曖昧なまま
- 家族に手伝ってもらうことを検討しているが、期間や役割を決めていない
- 出勤してもらう場所や環境を、どう用意すればいいか分からない
これらに一つでも当てはまる場合、自己流で判断を進めるより、実践知のある第三者と一緒に、自社に合った採用の進め方を整理したほうが、後悔のない決断をしやすくなります。
よくある質問
Q1. 出勤する場所や空間がなくても、採用はできますか。 可能です。事務作業やオンライン営業であれば自宅対応、あるいはコワーキングスペースの利用や出勤日を週3日に限定するなど、負担の少ない形から始めることができます。
Q2. 家族を採用するのは、避けたほうがいいのでしょうか。 一概には言えません。信頼関係やコミュニケーションのしやすさというメリットがある一方で、給与や役割の曖昧さといったリスクもあります。事前に期間や役割を取り決めておくことで、リスクを抑えられます。
Q3. 「稼働率60%」という基準は、どんな業種にも当てはまりますか。 時間単価で成り立つサービス業を想定した目安ですが、考え方自体は、業種を問わず参考にできます。自社の業務の性質に合わせて、目安の数字を調整してください。
Q4. 採用を決めたら、すぐに正社員を雇うべきですか。 必ずしも正社員である必要はありません。業務委託やパート・アルバイトなど、事業モデルや負担に応じた雇用形態を検討することをおすすめします。
Q5. 事業を拡大しないモデルを選んだ場合、採用は不要ですか。 必要な場合もあります。ただし、拡大を前提とした採用戦略とは異なり、長く共に働けるパートナーシップを重視した採用の考え方になります。
■まとめ
年商600万円を超えたら訪れる「採用すべきか」という迷いは、採用の判断そのものより先に、事業モデルを決めることで整理できます。
まずは、事業を拡大するのか、二人三脚で続けるのかを見極め、稼働率60%という目安を参考に、タイミングを検討することから始めてください。
家族を採用する場合は、最初から期間を決めておくことで、後々の感情的な衝突を減らせます。
そして、採用する人・しない人の基準を持っておくことが、勢いだけの採用を避ける鍵になります。
年商600万円から年商1500万円へ向かう過程で、採用は避けられない決断です。
事業モデルを決め、採用しない人を決め、ビジョンに共感できる人を探す。
その丁寧なプロセスが、最初のスタッフとの関係を、長く良いものにしていきます。
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株式会社バリュー経営 山縣正二郎
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