「研修には行かせたんです。でも、リーダーを任せたら止まってしまって」
支援先の社長が、少し肩を落としてそう話してくれました。
この記事は、研修や勉強会に投資しているのに、なぜか管理職・リーダーが育たないと感じている経営者に向けて書いています。
一般的には「本人の意欲や資質の問題」と受け取られがちです。ですが多くの場合、原因は別の場所にあります。人が育つ配分と、会社が用意している機会の配分が、ズレているだけです。
読み終える頃には、自社でどこから手を入れるべきかが整理できているはずです。
結論:マネジメントは、70対20対10の法則で育つ
先に結論を言います。
マネジメントは、70対20対10の法則で育ちます。
経験70、他者から学ぶ20、研修10。
一般に知られる人材育成の考え方で、厳密な統計というより目安ですが、私の現場感覚とも一致します。マネジメント力の大半は、実際に人を動かす経験から生まれます。研修は大切ですが、全体の10にすぎません。
そして、経験70がまだ積めていない人には、経験という時間が必要です。ここを飛ばして研修だけ増やしても、育つ順番が逆になります。
学びに投資して、気づいたこと
私自身、セミナーで聞いたこと、本で読んだことを自社に戻り試しましたが現場に落ちませんでした。
学んだ理論は立派でも、それを使って人を動かした経験が、まだ足りなかったのです。
70対20対10でいえば、10ばかりを積み上げて、70が空っぽの状態でした。
さらに振り返ると、もう一つ気づいたことがあります。
自分が現場に入ると、空気が変わる。しかし同時に、自分がいないと何も変わらない。
任せたかった。でも、先に手が出ていました。
その瞬間、部下が経験を積む機会を、私が奪っていたのだと思います。育ててこなかった、という静かな反省と悲しさがありました。
だから今は、任せる場面を先に設計する側に回っています。
「研修を受ければ人は育つ」という思い込み
多くの経営者が無意識に信じている前提があります。
「良い研修に行かせれば、人は育つ」という考え方です。
研修は手段で、目的は現場で判断できる人を育てることのはずじゃないですか。ところが、研修に行かせること自体が目的になってしまうケースが少なくありません。
研修で得られるのは、70対20対10の10にあたる部分です。
残りの90は、現場の経験と、周囲との関わりの中で積まれていきます。
研修の質を上げる前に、残りの90を積む場所があるかどうかを確認する必要があります。
本当の原因:社員の資質ではなく、経験を積む設計がないだけ
問題は、社員の意欲や資質ではありません。
経験70を積む場面が、会社の中に設計されていないという構造の問題です。
多くの会社では、任せる範囲が曖昧なまま、うまくいかないと社長が引き取ってしまいます。すると、本人は「任された経験」ではなく「途中で取り上げられた経験」を積むことになります。経験の量は増えず、自信だけが減っていきます。
また、経験70を積むには時間がかかります。失敗から学ぶ期間を、計画の中に織り込んでいない会社も多いです。結果として、育つ前に評価され、育つ前に役職だけが先に上がります。
部活動の苦労は、なぜキャリアで生きるのか
ここで、学生時代の部活動の話をさせてください。
部活動で、人をまとめる立場を経験した人がいます。練習の段取りを決める。意見の合わない仲間の間に立つ。結果が出ない時期に、チームの空気を保つ。
当時は、ただ苦労しただけに感じられるかもしれません。
ですが、これは経験70の原体験です。人を動かす難しさを、若いうちに、失敗が許される環境で積んでいるからです。
ここに、採用や配置を考えるうえでのヒントがあります。
「役職経験があるか」だけでなく、「人をまとめる苦労を、どこで積んできたか」を見る。部活動、アルバイトのリーダー、地域活動。形は何でも構いません。
そして、そうした経験がまだ少ない人には、会社の中で小さく経験を積ませる時間を用意する。これが、経験70の設計です。
具体策:経験70を積ませる3つの順番
①小さな役割から、期間を決めて任せる
いきなり店舗や部署を任せるのではなく、まず小さな範囲で任せます。「3ヶ月間、この業務の責任者」のように、期間と範囲を先に決めます。
②任せた後の「引き取らないルール」を決める
うまくいかない場面で、社長が引き取らない。代わりに、判断の基準を一緒に確認します。引き取ってしまうと、経験70は積まれません。
③他者から学ぶ20を、定例の場にする
経験を積むだけでは、学びが定着しません。振り返りの場を、週報や定例会議の中に組み込みます。誰かに話し、フィードバックをもらう20の部分を、仕組みとして用意します。
研修10は、この流れにつなげたときに、初めて活きます。
明日からできる確認項目
- 今、育てたい人に、小さくても責任を持たせている業務があるか確認する
- 任せた仕事を、途中で引き取っていないか振り返る
- 経験を振り返る場(週報・定例)が、仕組みとして存在しているか確認する
いきなり全部を整える必要はありません。まずは1つ、任せる業務を決めるところからで十分です。
こんな状態なら、確認・相談を検討すべき目安
以下に複数当てはまる場合、自社だけでの見直しには限界が来ている可能性があります。
- 研修や勉強会への投資はあるが、現場での変化が見えにくい
- 任せた仕事を、途中で社長が引き取ってしまうことが多い
- 経験を積む期間を、育成計画に織り込んだことがない
- 振り返りの場が、その場の報告だけで終わっている
一つでも心当たりがあれば、一度、外部の視点で育成の設計を整理してみることをおすすめします。
よくある質問
Q. 70対20対10は、厳密な比率なのですか。 A. 厳密な統計というより、経験が中心にあるという考え方を示す目安です。会社や職種によって配分は変わりますが、経験が最も大きな割合を占める点は共通しています。
Q. 研修は不要ということですか。 A. 不要ではありません。研修10は、経験70や他者から学ぶ20と組み合わせることで、初めて活きます。研修だけに偏らないことが大切です。
Q. 経験を積ませる時間が、会社にありません。 A. 大きな役割を任せる必要はありません。期間と範囲を絞った小さな役割から始めれば、日常業務の中で経験を積ませることができます。
Q. 部活動などの経験がない人は、育ちにくいのですか。 A. そんなことはありません。経験の種類は問わず、会社の中で小さく積ませる設計をすれば、十分に育ちます。
まとめ
- マネジメントは、70対20対10の法則で育つ(経験70、他者から20、研修10)
- 経験70がまだない人には、経験という時間が必要
- 研修を増やす前に、経験を積む場面を設計する
あなたの会社には、人が経験を積める場面が、設計されていますか。
仕組み化は、マニュアルを増やすことではありません。計画・役割・権限・判断基準を、会社が自走できる形に整えることです。自社のどこから整理すべきか確認したい方は、公式サイトをご覧ください。

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