複数店舗・複数拠点を持つ経営を考えるとき、出店の仕方には、大きく3つのパターンがあると思っている。
支店展開、チェーン展開、クラスター展開。 似ているようで、狙いも、うまくいく条件も、実はまったく違う。 今日は、この3つの違いを整理してみたい。
支店展開:飛び地で、点を打っていく出店 支店展開とは、東京、名古屋、大阪、福岡というように、離れた土地に、飛び地のような形で出店していくやり方だ。
例1)神奈川に美容室1軒、都内に1軒 こういう形が、支店展開のイメージに近い。 一店舗目は東京、二店舗目は名古屋、三店舗目は福岡。
ホームページや名刺に載せると、パッと目を引く。
全国に展開しているような印象を与えられるし、見栄えも非常に良い。
けれど、集客、社員の採用、育成、そして社員のキャリアアップという視点で見ていくと、ビジネスモデルによっては、わりと早い段階で行き詰まりが見えてくる。
拠点同士が離れているぶん、リソース(人、ノウハウ、集客の仕組み)を横展開しづらい。 それぞれの拠点を、ほぼゼロから立ち上げるようなものだからだ。 さらに、任せている責任者の個人的な力量に依存するビジネス形態だと、なおのこと危うい。
その人が抜けたときに、拠点そのものが立ち行かなくなる。
まさに「後が火の祭り」になることは、容易に想像がつく。
チェーン展開:既存店に商圏を重ねながら、鎖のようにつなげていく
チェーン展開とは、簡単に言えば、既存店舗に一部商圏を被せる形で出店していくやり方だ。
既存店の顧客からの協力(紹介や認知)と、会社としての仕組み化。
この2つを土台に、鎖のチェーンのように、店舗と店舗を連結・連鎖させながら広げていく。
例2)神奈川に20軒 これが、チェーン展開の典型的な姿だ。 一つの地域に密集して展開することで、人材の異動もしやすくなるし、集客のノウハウも横展開しやすい。
本部が確立した仕組みを、そのまま次の店舗にも適用できる。 支店展開と比べると、圧倒的に手堅い。
様々なリソースを上手に活用しながら、社員のキャリアアップも見込める組織づくりがしやすい。 これがさらに全国規模まで広がっていけば、全国チェーンと呼ばれる形になる。
クラスター展開:一部地域に、複数事業を重ねて根を張る チェーン展開と似ているようで、少し違うのが、クラスター展開だ。 クラスターとは、一部の地域に特定して、集中的に出店していくやり方を指す。
例3)愛知県の○○市に、A事業、B事業、C事業 チェーン展開が「同じ業態を、同じ地域に連鎖させていく」のに対して、クラスター展開は、「同一地域内で、業態を横断しながら重点的に押さえていく」戦略になる。
一つの地域における存在感やブランド力を、複数の事業を通じて高めていく。
その地域では圧倒的な認知と信頼を築けるぶん、地域そのものの市場規模に、成長の天井が左右されやすいという側面もある。
どれが正解、ではなく、どんな狙いを持つかで変わる。
ここまで整理してきたけれど、当然、支店展開にも、チェーン展開にも、クラスター展開にも、それぞれの課題がある。
どれが優れている、という話ではない。
どういう狙いを持って、その展開方法を選ぶのか。ここが本質だと思っている。
たとえば、自社にマーケティングの強さがあり、遠隔地であっても集客に困らないのであれば、支店展開という選択肢も十分に成り立つ。 その場合、判断はまったく変わってくる。
注意したいのは、「スタッフの想い」だけで出店先を決めてしまうケース
最後に、一つだけ注意しておきたいことがある。
「働いているスタッフが、地元に戻ってやりたいと言っている」 これをきっかけに、遠方への出店を決めてしまうケースだ。 その想い自体は、とても尊いものだと思う。
でも、出店の判断は、その想いだけで決めるものではない。
ここまで書いてきた、組織づくり、集客、採用、そして数年先の姿までを見据えたうえで、判断することをおすすめしたい。
支店展開なのか、チェーン展開なのか、クラスター展開なのか。
その選択は、単なる「出店場所」の話ではなく、「これからどんな組織を作りたいか」という話そのものなんだと思う。
