規模の違う経営に、同じやり方は通用するのでしょうか。
年商13億の経験の中で、年商1000万の事業にも通用する部分と、通用しない部分を整理して解説します。
もし今の自分が、年商1000万円の事業の社長になったら、何を持ち込み、何を手放すだろうか。
そんな問いを、自分自身に投げかけたことがあります。
年商13億円まで会社を育ててきた経験の中には、確かに、規模が変わっても通用する原則があります。
しかし同時に、その規模だからこそ機能していた仕組みや前提が、そのままでは小さな事業には当てはまらない、という現実もあります。
結論から言えば、
経営の経験値は「そのまま移植できるもの」と「規模に合わせて作り直すべきもの」に分かれます。
まずは、何が変わり、何が変わらないのかを整理していきましょう。
結論:「見る視点」は変わらないが、「動かす仕組み」は作り直す必要がある
年商13億円の会社を経営してきた中で、変わらず大切にしてきた視点があります。
- 数字を、感覚ではなくデータで見る
- 自分にしかできない仕事と、任せられる仕事を分けて考える
- 目の前の忙しさと、経営としての判断を切り分ける
これらの視点は、規模が変わっても変わりません。
一方で、その視点を「どう実行するか」という仕組みの部分は、年商1000万円の事業では、まったく別物として作り直す必要があります。
なぜ、大きな会社の常識を持ち込むと失敗するのか
年商13億円の会社で機能していたやり方を、そのまま年商1000万円の事業に持ち込むと、うまくいかない理由があります。
原因1:任せる相手が、まだいない
年商13億円の会社では、幹部やリーダーに判断を任せる体制が整っています。しかし、年商1000万円の事業では、任せる相手がまだ育っていない、あるいは存在しないことがほとんどです。
原因2:仕組み化のコストを、事業がまだ吸収できない
評価制度や会議体系といった仕組みは、一定の人数と業務量があって初めて効果を発揮します。小さな事業に大がかりな仕組みを導入すると、運用の負担のほうが大きくなってしまいます。
原因3:社長自身が、まだ現場の中心である必要がある
大きな会社では、社長が現場から離れることが前提になっています。
しかし、年商1000万円の段階では、社長自身が現場に立ち続けることが、事業を前に進める原動力になります。
規模の違う経営を同じ物差しで測ろうとすると、通用しない部分に気づかないまま、遠回りをしてしまうことがあります。
大きな会社の常識をそのまま持ち込むと、何が起きるか
規模の違いを無視して同じやり方を適用すると、次のような状態が起こりやすくなります。
- 仕組みが重すぎて、事業が動かなくなる:大きな会社向けの管理体制を小さな事業に持ち込むと、本来のスピード感が失われます。
- 任せる相手がいないまま、権限委譲を急いでしまう:育っていない人材に、大きな会社と同じ感覚で判断を任せると、現場が混乱します。
- 数字を見る習慣だけが浮いてしまう:数字を見る視点自体は正しくても、それを活かす体制が整っていないと、分析だけが積み重なり、行動につながりません。
規模の違いに気づかないまま経営の原則を移植すると、「正しいはずのことをしているのに、うまくいかない」という状態に陥ります。
今すぐできる対策:「通用する部分」だけを、小さく実践する
規模に関わらず通用する視点を、年商1000万円の事業に合わせた形で、小さく実践することから始めます。
数字を見る習慣は、そのまま持ち込む
規模が違っても、売上・経費・手元資金という基本的な数字を、定期的に確認する習慣は、そのまま活かせます。
任せる仕組みは、規模に合わせて簡素化する
大きな会社のような評価制度は不要です。まずは「この仕事は自分以外の誰かに任せられないか」を、一つずつ考えることから始めます。
社長自身が動く前提を、恥じない
年商1000万円の段階では、社長が現場に立ち続けることは、決して未熟さの表れではありません。むしろ、その規模に合った、正しい経営の形です。
規模に合わせて実践の仕方を調整することが、経験を正しく活かす鍵になります。
仕組み化の考え方:「規模に応じた仕組み」を、段階的に育てていく
小さく実践できるようになったら、それを事業の成長に合わせて、少しずつ育てていく段階に移ります。
- 数字を見る習慣を、事業の成長とともに、より詳細な管理へと発展させていく
- 任せる範囲を、事業規模と人材の育ち具合に合わせて、段階的に広げていく
- 社長が現場から離れるタイミングを、無理に急がず、事業の成熟度に合わせて見極める
ここで重要なのは、「今の規模に必要な仕組み」を見極め、それ以上でも以下でもない形で整えることです。
大きな会社の仕組みを先取りしすぎても、逆に何も整えないままでも、どちらも事業の成長を妨げます。
規模に応じた仕組みを段階的に育てていくことは、どんな規模の事業であっても、社長依存から抜け出す組織づくりの土台になります。
相談すべき目安:こんな状態なら専門家に相談を
自社の規模に合った経営の進め方を見極めようとすると、次のような状態にある場合は、一度外部の視点を入れることをおすすめします。
- 大きな会社の経営書やセミナーの内容が、自社にそのまま当てはまらないと感じる
- 何を今の規模で整え、何を後回しにすべきか、判断がつかない
- 仕組みを整えようとしたが、かえって現場が重くなってしまった経験がある
- 事業規模に合った経営の進め方を、体系的に学びたい
これらに一つでも当てはまる場合、自己流で試行錯誤を続けるより、実践知のある第三者と一緒に、自社の規模に合わせた進め方を整理したほうが、遠回りを避けやすくなります。
よくある質問
Q1. 大きな会社の経営ノウハウは、小さな事業にはまったく役に立たないのですか。 まったく役に立たないわけではありません。数字を見る視点や、任せる仕事と自分にしかできない仕事を分ける考え方など、規模を問わず通用する原則は存在します。実行の仕方を、規模に合わせて調整することが重要です。
Q2. 年商1000万円の段階で、仕組み化を意識するのは早すぎますか。 早すぎることはありません。ただし、大がかりな仕組みではなく、その規模に見合った小さな仕組みから始めることが重要です。
Q3. 社長が現場に立ち続けることは、経営として未熟なのでしょうか。 未熟さの表れではありません。事業規模によっては、社長が現場の中心であり続けることが、最も合理的な経営の形になります。
Q4. どのタイミングで、より大きな会社向けの仕組みを取り入れるべきですか。 社員数や業務量が一定の規模に達し、社長一人での管理が難しくなってきたタイミングが、一つの目安です。無理に先取りする必要はありません。
Q5. 規模が変わるたびに、経営のやり方を見直す必要がありますか。 必要です。事業が成長する過程では、それぞれの段階で最適な仕組みが異なります。定期的に、今の規模に合っているかを振り返ることをおすすめします。
■まとめ
年商13億円の経験は、年商1000万円の事業にそのまま持ち込めるものではありません。 数字を見る習慣や、任せる仕事を見極める視点は変わらず通用しますが、それを実行する仕組みは、規模に応じて作り直す必要があります。
まずは、通用する視点を小さく実践し、規模に合わない仕組みを無理に導入しないことから始めてください。 規模に応じた仕組みを段階的に育てていくことが、どんな会社にとっても、社長依存から抜け出す組織づくりの土台になります。
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株式会社バリュー経営 山縣正二郎
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