受注件数は確実に増えている。 それなのに、決算のたびに粗利率が下がっているような感覚がある。
年商3〜5億円規模で、右腕不在のまま会社を育ててきた建設・建築業の創業者にとって、これは見過ごしやすい、しかし危険な兆候です。
「受注が増えているのだから、忙しいのは仕方ない」とこの状態を放置してしまうと、会社は静かに、しかし確実に危うい方向へ進んでいきます。 本記事では、この状態がなぜ危険なのか、その理由を整理します。
結論:受注増が粗利低下を隠してしまうことが、最大の危険
結論から言えば、「受注は増えるのに粗利が下がる」状態が危険な最大の理由は、売上の伸びが問題の深刻さを見えにくくしてしまうことにあります。
売上が伸びていると、経営者は「成長している」という実感を持ちやすく、粗利率の低下を「一時的なもの」として見過ごしがちです。 しかし、粗利率の低下が構造的な原因によるものであれば、受注が増えるほど、その影響は拡大していきます。
なぜ、受注は増えるのに粗利が下がるのか
案件ごとの粗利管理が甘い
案件ごとの原価や粗利を正確に把握せず、全体の売上と利益だけを見ていると、利益率の低い案件が増えていることに気づきにくくなります。 受注件数の増加が、実は利益率の低い案件の増加によるものというケースは少なくありません。
忙しさは増えているのに、利益が残らない
現場対応に追われる中で、見積もりの精度を丁寧に検討する時間が確保できず、結果として原価を下回るような見積もりで受注してしまうケースがあります。
値上げ判断が、場当たり的になっている
材料費や人件費の高騰を踏まえた価格改定が、案件ごとにばらばらに行われていると、全体としての値上げの効果が薄れてしまいます。
この状態を放置すると、なぜ危険なのか
「受注は増えるのに粗利が下がる」状態を放置すると、次のような形でリスクが拡大していきます。
- 受注が増えるほど、利益率の低い案件も比例して増え、利益がさらに圧迫される
- 現場の負荷が増える一方で、利益として還元されないため、スタッフの疲弊が進む
- 資金繰りが徐々に厳しくなり、原材料費の高騰など外部環境の変化に対応する余力を失う
とくに建設・建築業は、原材料費や人件費の変動が大きい業種であるため、粗利管理が甘いまま受注を増やし続けることは、外部環境の変化に対する耐性を弱めることにもつながります。

今すぐできる対策
大きな戦略転換をしなくても、今から着手できる対策があります。
- 案件ごとの粗利を一覧化し、利益率の低い案件のパターンを把握する
- 見積もり作成時に、粗利率の下限をあらかじめ設定する
- 材料費や人件費の変動を踏まえた、価格改定の基準を明確にする
- 受注件数だけでなく、粗利率も含めた指標で営業成果を評価する
いずれも、受注そのものを減らすのではなく、粗利を守りながら受注する方向の対策です。
まずは自社の状況を客観的に整理したい方へ。 株式会社バリュー経営では、受注増と粗利低下の関係について、メールで日時を調整のうえ無料経営相談を承っています。
仕組み化・組織改善の考え方
受注増と粗利改善を両立させるには、営業活動の評価基準を「受注件数」だけでなく「粗利」も含めた形に見直すことが重要です。
高収益化プロセス再構築の考え方に基づき、見積もり作成から受注、価格改定までの一連のプロセスを、粗利を守る仕組みとして再設計することで、忙しさが利益に結びつく状態へと近づいていきます。
こんな状態になったら、相談を検討すべき目安
以下に複数当てはまる場合は、自社だけでの改善に限界が来ている可能性があります。
- 受注は増えているのに、決算のたびに粗利率が下がっている感覚がある
- 案件ごとの粗利を、正確に把握できていない
- 値上げ判断が、案件ごとにばらばらに行われている
- 忙しさは増えているのに、利益が残らない状態が続いている
よくある質問
Q. 受注件数を減らしてでも、粗利を優先すべきですか。 A. 受注件数を減らすことが目的ではありません。粗利率の下限を設定し、その基準を下回る案件については価格交渉や条件見直しを行うという判断軸を持つことが重要です。
Q. 材料費の高騰は、すべての案件に一律で反映すべきですか。 A. 一律の対応が難しい場合もありますが、少なくとも価格改定の判断基準を明確にしておくことで、案件ごとの対応のばらつきを減らすことができます。
Q. 案件ごとの粗利管理は、どこから始めればよいですか。 A. まずは主要な案件やサービスごとに、簡易な粗利を一覧化することから始めるのが現実的です。すべてを精緻に計算する必要はありません。
Q. 右腕不在の状態でも、粗利管理の仕組みは作れますか。 A. 作れます。既存の経理担当者や現場責任者と協力し、案件ごとの粗利を記録する簡易な仕組みから始めることができます。
Q. 粗利改善の効果は、どのくらいの期間で実感できますか。 A. 案件ごとの粗利把握や見積もり基準の見直しは数週間から着手できますが、粗利率の改善が数字として表れるまでは数ヶ月程度を目安に取り組む会社が多く見られます。
まとめ
受注は増えるのに粗利が下がる状態は、売上の伸びが問題の深刻さを見えにくくしてしまうため、放置すると危険度がさらに増していきます。
案件ごとの粗利を把握し、見積もりに粗利率の下限を設定し、価格改定の基準を明確にする。 この積み重ねが、受注増と利益改善を両立させる第一歩になります。
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