決算上は利益が出ている。 それなのに、手元の資金はなぜか思うように増えていかず、どの製品がどれだけ儲かっているのかも、正直はっきりしない。
年商5〜10億円規模で、利益は出ているものの資金繰りに悩む製造業の経営者にとって、これはよくある悩みです。
「原価が見えない」という状態は、規模の小さい中小製造業でも本当に脱却できるものなのか。 本記事では、その可否と、脱却のために必要な考え方を整理します。
結論:中小製造業でも脱却は可能。ただし「どんぶり勘定」を前提にした管理では難しい
結論から言えば、原価が見えない状態は、中小製造業であっても十分に脱却可能です。 ただし、原価計算がどんぶり勘定のまま続いている状態では、脱却は難しいという条件がつきます。
材料費や労務費、経費を大まかに按分するだけの原価計算では、製品ごとの実際の採算がどうなっているかが見えません。 これは、精緻なシステムがないからではなく、原価を製品単位で捉える仕組みそのものが整っていないことが原因です。
なぜ、「原価が見えない」状態になるのか
原価計算が、どんぶり勘定になっている
材料費や労務費を、製品ごとではなく全社一律で按分している場合、実際にはどの製品が利益を生み、どの製品が利益を圧迫しているのかが分からなくなります。
製品別の採算が、見えていない
工数や設備稼働時間が製品ごとに記録されていないと、労務費や経費を製品単位に配分することができず、正確な原価計算が困難になります。
利益が出ているはずなのに、手元に残らない
製品別の採算が見えないまま全体の利益だけを追っていると、実は利益率の低い製品への依存度が高まっていることに気づけません。 これが、決算上の利益と手元資金のギャップを生む一因になります。
この状態を放置すると、どうなるか
原価が見えない状態が続くと、次のような影響が積み重なります。
- 利益率の低い製品への受注が増え続け、忙しさの割に利益が積み上がらない
- 値上げ交渉や価格改定のタイミングを逃し、原価上昇の影響をそのまま受け続ける
- 資金繰りの見通しが立てにくく、投資や採用の判断を根拠なく行うことになる
とくに製造業は、原材料費の変動が経営に直結しやすいため、原価が見えない状態のまま規模が拡大すると、資金繰りへの影響もさらに大きくなっていきます。
中小製造業でも取り組める、脱却へのステップ
大がかりなシステム導入をしなくても、次のステップから着手できます。
- 主要な製品について、材料費・労務費・経費を大まかにでも製品単位で分けて集計する
- 工程ごとの作業時間を記録し、製品ごとの工数を把握する
- 製品ごとの粗利を一覧化し、利益率にばらつきがないかを確認する
- 利益率の低い製品について、価格や受注条件の見直しを検討する
すべてを精緻に管理する必要はなく、まずは主要製品から着手することが現実的です。
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仕組み化・組織改善の考え方
原価を見える化するには、経理処理の精度を上げることよりも、現場の工数や材料の使用状況を製品単位で捉える仕組みを構築することが重要です。
高収益化プロセス再構築の考え方に基づき、原価管理を利益改善の起点として位置づけることで、単なる数字の把握にとどまらず、価格戦略や受注方針の見直しにもつなげることができます。
こんな状態になったら、相談を検討すべき目安
以下に複数当てはまる場合は、自社だけでの改善に限界が来ている可能性があります。
- 製品ごとの採算を、正確に把握できていない
- 利益は出ているはずなのに、資金繰りが厳しい状態が続いている
- 原価計算が、どんぶり勘定のまま長年運用されている
- 価格交渉や受注判断を、根拠のない感覚で行っている
よくある質問
Q. 中小製造業でも、製品別の原価管理は可能ですか。 A. 可能です。最初から精緻なシステムを導入する必要はなく、主要な製品から工数と原価を大まかに把握することから始めるのが現実的です。
Q. 原価計算の精度を上げるには、どのくらいの期間が必要ですか。 A. 主要製品の原価把握までは数ヶ月、全製品への展開や精度の向上までは半年から1年程度を目安に取り組む会社が多く見られます。
Q. 利益は出ているのに手元に現金が残らないのは、原価だけの問題ですか。 A. 原価管理の不足が一因であることは多いですが、売掛金の回収状況や在庫の増減なども影響します。原価とあわせてキャッシュフロー全体を確認することをおすすめします。
Q. 工数管理は、どのように始めればよいですか。 A. 最初から詳細なタイムスタンプを取る必要はなく、工程ごとにおおよその作業時間を記録することから始めるのが現実的です。
Q. 原価が見える化されると、具体的にどんな判断ができるようになりますか。 A. 利益率の低い製品への対応方針(価格改定、受注条件の見直し、生産の効率化など)を、根拠を持って判断できるようになります。
まとめ
原価が見えない状態は、中小製造業であっても脱却は可能です。 ただし、どんぶり勘定の原価計算を前提にしたままでは、脱却は難しいという点には注意が必要です。
主要製品から原価と工数を製品単位で把握し、製品ごとの粗利を確認し、利益率の低い製品への対応方針を見直す。 この積み重ねが、原価の見える化と利益管理の実現につながります。
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