幹部候補に任せてみたものの、対応に時間がかかったり、やり直しが必要になったりして、結局「自分でやった方が早い」と手を出してしまう。
事業を引き継いだばかりの2代目社長にとって、これは非常によくある感覚です。
前任者流のやり方が残っていて変えにくく、組織の基準や役割が曖昧なまま引き継がれている状態では、この感覚が生まれるのも無理はありません。 本記事では、「俺がやった方が早い」という状態を解消するための、仕組み化の手順を整理します。
結論:「俺がやった方が早い」は、基準がないことへの正しい反応
結論から言えば、「俺がやった方が早い」と感じてしまうのは、社長の性格や完璧主義の問題ではありません。 判断基準が言語化されていないために、任せた結果にばらつきが出てしまい、それを社長が正しく感じ取っているという状態です。
前任者の時代は、経験と勘の中で自然と一定の水準が保たれていたとしても、それが言語化されていない限り、代替わりのタイミングで再現できなくなります。 この構造を理解しないまま「もっと任せなければ」と考えるだけでは、状況は変わりません。
なぜ、「俺がやった方が早い」と感じてしまうのか
前任者流のやり方が、基準として残っていない
先代の時代のやり方は、暗黙のうちに機能していたとしても、文書やルールとして残っていないことがほとんどです。 2代目社長が「なぜこうするのか」を説明できないまま業務を引き継いでいると、任せる側も任される側も、判断のよりどころを持てません。
組織の基準や役割が、曖昧なまま引き継がれている
誰が何を判断すべきかという役割分担が明確でないと、任せたつもりでも実際には責任の所在が曖昧なままになり、結局社長が最終確認することになります。
一度の失敗で、任せることをやめてしまう
任せてみて期待通りの結果が出ないと、「やはり自分でやった方が早い」と結論づけてしまいがちです。 しかし、これは仕組みが整っていない状態での一度の結果に過ぎず、基準を整えれば変わる可能性があります。
「俺がやった方が早い」を解消する仕組み化の手順
手順1:「俺がやった方が早い」と感じる業務を洗い出す
まず、実際にどの業務で「自分でやった方が早い」と感じているかを具体的に書き出します。 感覚だけで判断せず、業務単位で洗い出すことが、仕組み化の出発点になります。

手順2:その業務の「合格ライン」を言語化する
完璧を求めるのではなく、「ここまでできていれば合格」という水準を具体的に言葉にします。 基準がないまま任せると、社長の頭の中にある「暗黙の合格ライン」と、任された側の理解にズレが生じます。
手順3:前任者流のやり方のうち、目的が分かるものを整理する
前任者のやり方をすべて否定するのではなく、「なぜそうしていたのか」という目的を確認し、有効な部分は基準として残します。
手順4:小さな業務から、基準に沿って任せてみる
洗い出した業務のうち、影響の小さいものから、作成した合格ラインに沿って任せてみます。 結果が基準に届かない場合も、すぐに巻き取るのではなく、基準そのものを見直す機会と捉えます。
手順5:任せた結果を、評価やフィードバックに反映する
基準に沿って対応できた場合は、その結果をきちんと評価に反映します。 これにより、任される側も基準に沿って動く意義を実感できるようになります。
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仕組み化・組織改善の考え方
「俺がやった方が早い」を解消するには、任せる・任せないという判断の前に、合格ラインを言語化するというステップが欠かせません。
前任者流のやり方を基準として整理し直すことは、単なる業務効率化ではなく、脱・属人化に向けた組織づくりの中心的な取り組みです。 この積み重ねが、社長が抜けても止まらない組織をつくる土台になります。
こんな状態になったら、相談を検討すべき目安
以下に複数当てはまる場合は、自社だけでの改善に限界が来ている可能性があります。
- 任せてみても、結局は自分で確認・修正してしまう
- 前任者流のやり方を変えたいが、何が基準だったのか分からない
- 業務や役割の基準が、文書として存在していない
- 半日でも現場を離れると、対応が滞ってしまう
よくある質問
Q. 合格ラインを言語化する際、どこまで細かく決めるべきですか。 A. 最初から完璧な基準を目指す必要はありません。まずは「これができていれば及第点」という大まかなラインから始め、運用しながら調整していくことをおすすめします。
Q. 一度任せて失敗した業務は、もう任せない方がよいのでしょうか。 A. そうとは限りません。失敗の原因が基準の不在にある場合、基準を整理したうえで再度任せることで、結果が変わる可能性があります。
Q. 前任者のやり方を否定せずに基準を作り直すには、どうすればよいですか。 A. 「なぜこのやり方だったのか」を確認し、有効な部分は残しつつ、目的が不明確な部分だけを見直す姿勢が重要です。全否定ではなく、目的からの再構築という位置づけで進めます。
Q. 仕組み化には、どのくらいの期間がかかりますか。 A. 業務の洗い出しから合格ラインの言語化までは数週間、実際に任せて定着するまでは数ヶ月から半年程度を目安に取り組む会社が多く見られます。
Q. 幹部候補がまだ育っていない段階でも、この手順は始められますか。 A. 始められます。むしろ基準を作りながら小さな業務を任せる経験自体が、幹部候補の育成にもつながります。
まとめ
「俺がやった方が早い」という感覚は、社長の性格の問題ではなく、任せるための基準が言語化されていないことから生まれています。
業務の洗い出しから、合格ラインの言語化、前任者流のやり方の整理、小さな範囲での権限委譲、評価への反映まで、5つの手順を踏むことで、この感覚は少しずつ変わっていきます。
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